miyabi-night8

視力は悪い方じゃない。

のに、コソコソと入って来たヤツが本気で誰か分からなかった。

男の身体をジロジロ見る趣味はないけど、誰だ?って思わずジロジロ見た。

スタイルがいい。っつか、脚ながっ。

ちょっと細いな。でもキレイな身体してる。

って、もしかして。

そこで気づく。

こそこそおどおどキョロキョロ。

周りを伺うようにしてるあの感じ、メガネがなくて前髪がちょっとだけふわって上がってて、ちょっとだけ顔が出てるから分かんなかったけど。

あれ、まさか。まさかの相葉だ。

目が、悪いんだろう。あんまり見えてない感じ。

もう俺しかいない大浴場。俺にも気づいてないっぽい。

何故かタオルで前を隠さずに左肩を隠している。

相葉。お前なかなかいいモノ持ってんだなって、俺は何を見てるんだ。

相葉はまたこそこそっとシャワーブースに行って、こそこそっと頭と髪を洗い始めた。

完全に出るタイミングを失ったおれは、何故か何故か風呂につかったまま相葉観察をしていた。

キレイな身体、してんなって。

肌、白い。

元白いのかそれともあんまり外に行かないから白いのか。

二宮姫といい勝負じゃね?

とにかく男にしたら白すぎってぐらいの白さ。だからと言ってモヤシっぽいってんでもない。細いけど、ガリガリひょろひょろじゃない。

何か。

すっげぇエロい、かも。

って、俺は相葉相手に何を言ってんだ。

いや、でも正直意外なんだよ。

あーんなオクちっくな相葉が、こーんな身体してる、なんて。

相葉はあっという間に全部洗い終えて、辺りをキョロキョロっと見渡した。

そして。

そして。

何故か洗っている最中もずっと掛けていた左肩のタオルを、取った。

俺から今見えるのは相葉の後ろ姿。

隠してた左肩。

タオルの下から出てきたのは、赤とも茶とも取れる大きな何だ?あれ。

相葉はそのタオルを洗って、また左肩に乗せた。

隠してる?隠したい?

見られるのが嫌だからこんな時間に風呂なのか?何かあったのか?過去に。い、じめとか。

だからあんなにどもったりする?こっちが悪いことしてるみたいになるぐらいの恐縮。

相葉がまた相葉にしちゃ随分立派なモノを堂と下げて、でもこそこそと浴槽に入った。

一番奥の隅に居る俺は、相葉にはやっぱり見えていないらしく、相葉は左肩のタオルを取って縁に置いてちゃぷんってつかった。

気持ちいい

くふふふって、文字にしたらそんな、不思議な笑い声。

くるんってこっち側を向いて、前髪を掻き上げた。

っあっ相葉あああっ

ひゃあああああっだだだだだ誰っ

思わず叫んだ。もれなく相葉も叫んだ。

そしてざああああああってすごい音の雨。また雨。ゲリラ豪雨。ってそんなのどうでもいい。

俺は立ち上がって相葉に近寄った。

だって相葉が相葉が相葉がっ

お前っ

さささささ櫻井くんごごごごごごめんなさいいいいいっあのっぼぼぼぼぼ僕もう出るからっ

慌てて立ち上がって逃げようとする相葉の両肩を思わず掴んで引き止めた。

ひゃああああああってまた悲鳴。さらに雨の音が激しくなった。どんだけ降ってんだ。

がっちがちに強張った身体。逃げるように顔を背けてぎゅって閉じられる目。

そんな怯えなくても。

って、ビビるか?んなことされたら?

白い肌。

人の何も着てない身体をこんな風に触るなんて初めてだけど、吸い付くみたいにしっとりしてる。何か超キレイな気がする。俺とは違う。同じ男なのに。

その白い肌にすっげぇ鮮やかに浮かぶのは痣?

しかも相葉が。

髪の毛上げた相葉が。

怯えて歪んだ泣きそうな顔なのに、むちゃくちゃ美人。

んなビビるな。何もしねぇよ

ささっさささささ櫻井くんっははははは離してっ

至近距離。

超、至近距離。

マジ男?

ほっぺたとかツルツル。ヒゲとかねぇの?何で?

全く視線を合わそうとしない相葉に、ちょっとイラっとしてくる。

あの、さっきの顔が見たい。

笑った顔。めちゃくちゃキレイだった。可愛かった。相葉なのに。相葉のくせに。

だって信じられないだろう?

全体的に長い上に鬱陶しいぐらい長い前髪に黒縁メガネ。

喋ればどもって怯えまくって。

そんな相葉がこんな美人ってどういうことだ。しかも、この肩。

一気に、興味が湧く。

この相葉雅紀って、ヤツに。

目の前の肩に、俺は引き寄せられるように、思わず。